ウォッチャーの映画備忘録

映画とゲームと音楽とカメラ

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『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

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【はじめに】

どうも、ウォッチャーです

 

長いこと放置していたブログです

 

日々仕事とゲームと映画を観るので精いっぱいになってました

 

映画を観る頻度にブログが完全に追いつけなくなってかなり周回遅れとなり、諦めの境地に至ったという感じ

 

しかし、こうして久々にブログを更新する心境に至ったのが先日ツイッター上の映画好き界隈の中で行われたイベント「シン・オールタイムベスト映画」でした

 

相互フォローの空翔ぶギロチンさん(@moviekoala)が主催、集計されておりましたこの企画、参加者がなんと542人(ベスト外国映画での人数)というツイッター界隈としてはなかなかな人数が集まっておりかなり面白い結果となっておりました!

 

空飛ぶギロチンさん主催の企画では「ベスト日本映画」「ベスト外国映画(日本以外)」「ベストアニメ映画」の三種類行われており、ウォッチャーはそれぞれ投票させていただいております

今回レビューする『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』はそのうちの一つ「ベスト外国映画」のウォッチャー自身のベスト10の作品です 

 

 

 

 

ちなみにこちらが自分のベスト10と全体集計結果のベスト10

 

 

 今後はこの二つのベスト10を元に作品を振り返っていこうと思います

 

それでは本編へ!!

※画像を引用したかったのですが引用元がちょっとはっきりし難かったのでほとんど文字だけになってしまってます・・・

 

 

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

日本公式トレーラー


www.youtube.com

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法公式Twitter

@FP_movie0512 

 

作品概要

原題:The Florida Project

制作国:アメリ

制作年:2017年

日本公開年:2018年

配給:A24(日本配給:クロックワークス

日本公式サイト:

klockworx.com

(本来の公式サイトは2021年6月27日現在はドメイン切れなのかカジノのサイトになっています)

 

 

あらすじ

6歳のムーニーと母親のヘイリーは定住する家を失い、フロリダ・ディズニー・ワールドのすぐ外側にある安モーテルでその日暮らしの生活を送っている。周りの大人たちは厳しい現実に苦しむも、ムーニーはモーテルに住む子供たちと冒険に満ちた毎日を過ごし、そんな子供たちをモーテルの管理人ボビーはいつも厳しくも優しく見守っている。しかし、ある出来事がきっかけとなり、いつまでも続くと思っていたムーニーの夢のような日々に現実が影を落としていく—

出典:THE KLOCKWORX『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

  

 

ウォッチャー’sレビュー

本作『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(以下『フロリダ』)のレビューはウォッチャー自身2018年劇場で観たときのがあるのでこちらも参考にしてください

 

www.moviewatcherintoyama.com

 

当時の評価点数は114.8点つけてますけど、今振り返ると満点120点つけても大袈裟じゃないくらいグレイトな作品であることを今回再認識しましたね、最高です

 

本レビューを書くためにアマゾンプライムで2回観直しました

 

 

 

 

 

とにかくウォッチャーとしてはこの作品は映像作品の理想を具現化したようなパーフェクトOFパーフェクトと言っても過言ではないと思ってます

インデペンデント映画でありなが、ブロックバスター映画にはない魅力と巧みなセンスが満載でどの年齢の人が観ても心に何かを残していくこと間違いなしの作品

エンタメ性と社会性を兼ね備えており、なおかつ社会性に付随しがちな説教臭さというものは微塵もない(この理由考察については後述します)のも作品の良さ観やすさにつながっている気がします

 

《演技未経験者多数の中、ベテラン俳優が魅せる至高の助演》

まずこの作品において特筆しておかなければいけないことは、主要人物のほとんどが演技未経験者であること

まず母親ヘイリーを演じるブリア・ヴィネイトさんという方、もともとはファッションデザイナーをやっている方で自身のアパレルもあるらしいのですが

監督であるショーン・ベイカーからなんとインスタグラムで見出され作品のオーディションを誘われたというなんともイマドキな出演経緯

当然ブリアさんには演技経験など全くなく、本人はかなり不安だったそうだが監督の計らいやワークショップでサマンサ・クアンさんという演技指導の先生のおかげでうまく馴染めたそうです

それにしたって全然未経験と思えないくらいの自然体な演技で、もしかしたらブリアさん自身ヘイリーと変わらないのでは?と思ってしまいそうだがインタビュー観たりする限りとても誠実そうな人だとわかりました(笑)

以下ブリア・ヴィネイトさんのインタビュー

 

 

 

娘のムーニー役であるブルックリン・プリンスちゃん

彼女は実際子役としていくつかの作品には出演してきて全くの素人ではないようですが、しかしあの歳でしっかりしたものを感じます

ショーン・ベイカー監督の手法のようですが、かなりナチュラルな演出を好むようで

作品全体的にアドリブ感のある自然なやり取りが多く、それが相乗してムーニーという子供があたかも本当に存在している子でドキュメンタリーを観ている気にさせられる

以下ブルックリン・プリンスちゃんのインタビュー

 

 

この親子が本当に親子にしか見えなくて「これ本当にフィクション映画なのか?」

と疑わせるくらい自然でリアルで面白いんですね

 

そして彼女たちをいろんな意味で支えたのがモーテルの管理人ボビーを演じた名優ウィレム・デフォー

あの名優がとにかくグッと堪えた演技で、とてつもない次元で役に馴染んでいました

ジョン・ウィック』では凄腕スナイパー、『スパイダーマン』では宿敵グリーンゴブリンなど多彩な役柄で、しかもちょっと強面な役者さんなんですが

彼もまた本当実在するかのようなリアルな佇まいをしていて流石だなと思いました

ウィレム・デフォーのインタビューも参考にどうぞ

 

 

他にも、序盤にムーニーの遊び仲間の新入りになるジャンシーという女の子は撮影現場の近くの量販店で監督じきじきにスカウトされた女の子だっていうから驚きですよねぇ

このように、演技未経験者を巧みに演出することで作品全体のリアリティが底上げされて観てる側も没入してしまうのであろうと思いましたね

このショーン・ベイカーという監督、只者ではありません!

 

ショーン・ベイカーというインデペンデント映画界期待の監督》

メジャー作品しか観ないよーって人には馴染みがないのも当然なんですが

このショーン・ベイカー監督、若い方なんですが長編映画はまだ5,6本くらいなんですね

しかも日本で配給されているのはこの『フロリダ』のほかに

『チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密』『タンジェリン』の合計3本しかないんですよね

今回この記事を書くにあたってこの過去2作も拝聴いたしましたが、どれもすごく面白いです!

2021年6月現在での視聴方法は『チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密(原題:❝STARLET❞)』はU-NEXTで、『タンジェリン』はYouTube映画で鑑賞できますので良かったら観てみてください


www.youtube.com


www.youtube.com

 

 

 

 

ショーン・ベイカー監督のこれらの作品に共通しているのは、

「世間の陰で生活する、なにかしら陽の目を見ることがない人たちをとても客観的にでも優しさをもって描く」

ってことです

この辺のことはライムスター宇多丸さんも同じことを仰っていたのでパクリと思われそうなんですが(笑)でも実際そうなんですよね

その登場人物たちの立場や言動が良いか悪いか問うたりしないし、善悪を隔て分けない描き方をしているんです

それぞれに言い分や立場の違い、置かれた状況があってその人たちが生きているって表現が伝わってきます

そしてそれらのテーマを効果的に演出するのが先ほど述べた「自然的な、いうならばドキュメンタリックな手法演出でリアルに映し出していく」ってスタイルの監督です

 

これ、本当にウォッチャーのドストライクなパターンだし、今後の監督の作品が楽しみで仕方ないんですよね!

 

 

 

 

《カラフルな風景に差すアメリカ社会の暗い影》

ここからは『フロリダ』のネタバレを避けつつ内容に触れながら感じたことをツラツラ書いていきます

 

冒頭子供たちの無邪気なやり取りの後に流れるクール&ザ・ギャングの「セレブレーション」

なんと景気の良いオープニングだろうか

そこからムーニー率いる悪ガキたちのいたずらばかりの夏休みが展開されていく

照りつける熱い日差し、元気な子供たち、そして配色の鮮やかさ

主人公ムーニーの服、母ヘイリーの髪、モーテルの外壁

全体的にパステルカラーがふんだんに散りばめられていて目がとても楽しい

作品の舞台となるフロリダは、あの有名なウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートがある州

ムーニーやヘイリーが仮住まいにしているモーテルの名前が❝マジック・キャッスル❞で外見も明るいパープル色になっている

劇中にとある新婚の若い夫婦がハネムーンにやってくるくだりがあり、その際ディズニーのリゾートホテルを取ったつもりが間違えてムーニー達が暮らすこの安モーテルに来てしまうんだけど

その一連の流れを見てわかるのが「物語の舞台となるモーテルがディズニーに限りなく近い場所」であることが推察されるわけですよ

この安モーテルはヘイリーのように安定した職や低収入の家族がその日暮らしをするために暮らしているわけですが、その一方夢の国がすぐ目と鼻の先にあるのはこのアメリカの格差社会を暗に示していることが伺えます

 

余談ですけどそもそも日本人にとってあまり馴染みがないモーテルというサービス

元々は長距離ドライバーたちが安く短期的に休憩用として利用することから始まったビジネスホテルだったようで❝モータリスツ・ホテル❞がそのまま略されてモーテルになったようです

日本ではその利用方法などからラブホテルの感覚に近いですね、車を泊まる部屋の前に着けて休憩していく感じとか

 

さてそのモーテルに暮らす人々はまさにあのサブプライム住宅ローン危機の煽りをもろに受けた人たちであろうことが伺えます

というか現にアメリカでの貧困層というのはもっぱらあの一件が深く関わってると思っても差し支えないと思います(もちろん別の理由から貧困な人もいますが)、それだけあの事件は未だに尾を引く大問題だったことと認識させられます

ヘイリーも偽ブランドの香水を無許可で路上販売してなんとかその週の家賃を得てやりくりするのが中盤で描かれ生活の苦労を感じたりします

ただこの母ヘイリーにも母として親としての問題点も物語が進むにつれて徐々に見えてくるわけです

 

序盤子供たちの楽しい夏休みが展開されていたと思ってたら、中盤から母ヘイリーのシーンが増えてきてだんだんと楽しかったはずの物語にひっそりと影と悲劇が差してくるんですね

そして終盤ある出来事が原因でヘイリーとムーニーに一大事が舞い込んでくるという流れがとても映画として巧みに描かれており、ラストはもう本当に

と言わんばかりの展開が待ち受けております!この展開に賛否はあると思いますが、「映画」という概念を考えたときにベイカー監督は自分の色で賭けに出たなっと思いましたし、個人的にはそれがすごく腑に落ちました

 

《徹底的に客観視するスタイルが説教臭さを打ち消している》

ただこうやって社会的なテーマが背景になってはいるもののそこまで説教臭くないというか、「今のアメリカはこうなんです!どうですか!?」といった押しつけがましさは一切ない、もしくは「可哀そうでしょ!?」っていう同情的な描き方もしていない

あくまでも軽快にかつ客観性というか第三者の視点に徹底しているんです

三者の視点、それはまさに映画を観ている観客そのものに近いものがありますね

こういった視点・視線が観客対して没入感を与えつつ、でも一定の距離感も持ち合わせているように感じています

それがヘイリーやムーニー対してはある種の優しさというか、温かさでもあります

例えば母ヘイリー、正直言って母親としてはかなり最低に近い部分はあります(笑)

観ていて不愉快になる人もいると思います

だけどどこか「まぁ言い分もわからんでもない・・・かも」と思わせられる、それこそ先ほど述べた格差社会の影が感じる部分もあって一概に彼女だけを責めるっていうのもなんか違うし、それでも娘のムーニーを食べさせていかなきゃと母親として奮闘はするわけです

とは言えやはり母親としてどうなのよ!?と思えることもありますが・・・

 

ムーニーも母親譲りのかなり悪ガキでいたずらや暴言も平気でしてます

しかし、物語が進むにつれてそれがなんだか彼女の一種の強がりというか、こんな状況だけど精いっぱい子供として楽しまなきゃといった気概にすら感じさせます

そんな親子を観ていくうちに観客は心配な気分にさせられます

 

《観客に一番近い存在、ボビー》

そんなあぶなかっしい親子を厳しくも温かく見守るのがモーテルの管理人ボビー。

いたずらばかりするムーニーに手を焼き、ヘイリーにはそれも注意しながら家賃を催促する彼はこの物語で一番観客に近い、なんなら観客の代弁者としてこのストーリーに関わっていきます

ボビーは管理人としてルールを順守してもらおうと厳しいことをいうこともありながら、ヘイリー親子を見つめる目は非常に温もりに満ち溢れていて

しかしモーテルにはヘイリー親子のような事情を抱えた人たちで溢れかえっているわけですから、誰かひとりを贔屓して助けるわけにもいきません

ボビーは本当は凄く優しい存在で困ってる皆をどうにかしてあげたいんです

しかし、やはりそれはどうすることもできな現実、優しい人が居るだけではみんなが救われないことを象徴しているかのようですよね

まさに観客と同じなんです、干渉できないアドバイスすることすらできない、そんな立場

まぁ管理人というだけでモーテルのオーナーは別にいることが劇中で分かりますが、時折ヘイリーに肩入れすることもあったりしてボビーの優しい一面が垣間見えます

余談ですがそのオーナー役はベイカー監督の常連俳優さんだったりします

 

また『フロリダ』で描かれるのは貧困の問題だけではありません

子供たちが無邪気に遊んでいるところにモーテルの住人には見えない男がしれっと近寄っていき子供たちの輪の中に入ろうとするシーンがあります

一見すると何ともないように感じるシーンですが、ボビーの目線のカットに変わった瞬間になんだか嫌な予感をさせます

それはボビーの表情も手助けしているのも事実なんですが、明らかにボビーの視線だからこそ見える解釈というか感じ方をうまく映像として組み込んでいます

アメリカの貧困な子供たちに伸びる魔の手を垣間見た瞬間ともいえるシーンです

 

 

《タイトルに込められた意味》

『フロリダ・プロジェクト』というタイトルにはウォッチャーの知っている限り、二つの意味があるようです

一つは「プロジェクト」からくる「スラム」といった意味(語弊がありそうですが近いという意味で)

アメリカでは低所得者向けの公営団地のことを「プロジェクト」というそうです

それはまさにこの映画におけるモーテル❝マジック・キャッスル❞のことを示しているんだと思います

 

 

そしてもう一つの意味は

ディズニーワールド開発計画の名称

だそうです

これウィキペディアに乗ってて知ってびっくりしました

 

つまり「貧しい人たちの住む場所」という意味と、「夢の国の初期の企画名」

というまるで相反する意味のダブルミーニングになっているってことだと思うんです

苦しい生活を強いられる人々のすぐ目の前で繰り広げられる夢のテーマパーク

何とも皮肉な現実ですよね、この作品の核はすでにタイトルから提示されていたと思うと流石だなーと感心してしまいます

 

 

《カットやアングルで観客に伝える》

上記にも挙げてきたように、これらの説明はすべてカットや演出、カメラのアングルを巧みに使って観客に説明しているんですね

例えばモーテルがディズニー・ワールドの距離感や位置関係をディズニー・ワールドから上がる花火でわかったり、

また子役の置かれてる状況や言ってることのヤバさ(作品を観たら伝わると思いますw)だったり、また登場人物の関係性だったりなどなど・・・

 

決してセリフで説明するんじゃなくて、全てスクリーンから読み取れる構造になっていて、それでいてテンポも悪くならずそのまま感情が自然と乗っかて行く・・・

この辺がショーン・ベイカー上手いなーと思いましたし、自分が映像作品における理想だと感じてこの作品を高く評価しております

 

 

【最後に】

 

さてこれだけ作品を褒めちぎって勧めて、実際にこれを読んでくださった方が面白いと思ってもらえるか不安ですが・・・

しかし結果つまらなかったとして良いんです

世界にはこういった映画監督、もしくはこんな映画作品があることだけでも知ってもらえると個人的にはうれしいです

面白い映画ばっかり観たって何も得られないでしょ?面白くない作品を知っているからほかの面白い作品に出会えるわけで

という自身なさげな終わりになりましたが、この『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

時間があるときに一度鑑賞してみることをお勧めします!

今後も冒頭に伝えたランキングを続けていこうと思いますので機会があればまた読んでください

ではまた、よき映画ライフを!!!