富山県もとうとう映画館が営業休止となって家から出なくなりました
どうもムービーウォッチャーです
今年1月の鑑賞映画レビューパート2でーす
ラストレター
映画『「ラストレター」』予告【2020年1月17日(金)公開】
TOHOシネマズファボーレとやまにて鑑賞
演出★★★☆☆
脚本★★★☆☆
映像★★★★☆
音楽★★★☆☆
配役★★★★★
カタルシス度 82%
合計 88.4点
【総評】
『スワロウテイル』『花とアリス』を代表とする岩井俊二監督の最新作。
岩井監督に「ピュア」を表現させたら右にでる者はいないのではないか、そう思わされる。残酷なほどのピュア、映し出される空気や光や人物の目線など、この上ない表現が観客に疑似体験と共感を与える。
この映画を観た人の多くが指摘されているのだが、1995年の岩井俊二監督作品『Love Letter』ととても濃い関連性がある。
実際に『Love Letter』で主演していた中山美穂、豊川悦司が『ラストレター』にも出演している。両方の作品を観ればさらに楽しめる作品であろう。
本編の過去編で登場する森七菜の純朴感は貴重である。触れると壊れてしまいそうなくらいのイノセントを彼女は映像で表現できてしまってる。評価させるべきかと個人的には思う。
リチャード・ジュエル
映画『リチャード・ジュエル』30秒予告 2020年1月17日(金)公開
東宝シネマズファボーレとやまにて鑑賞
演出★★★★☆
脚本★★★☆☆
映像★★★★☆
音楽★★★☆☆
配役★★★★★
カタルシス度 90%
合計 94点
【総評】
現在89歳(!)のベテラン俳優で近年は映画監督としても名高いクリント・イーストウッド監督の作品。年をとっても衰えるどころか、むしろパワーアップが止まらないとんでもない人。2014年に『アメリカン・スナイパー』、2016年に『ハドソン川の奇跡』、2017年に『15時17分、パリ行き』、2018年には『運び屋』と、実際に起きた事件や出来事をベースに、あるいは忠実にドラマ化して毎回話題となる。
今作『リチャード・ジュエル』もまさに実際にあったテロ冤罪事件を忠実に再現されており、その事件の悲惨さを伝えながらエンタメの映像作品としての立場も両立していると思う。
実話ベースの作品はどうしてもオチが弱いというか、フィクションのように物語の起伏は薄くなりがちで、事実『15時17分、パリ行き』は真相を知っていることもあってかカタルシスは得られなかった。しかし今回の『リチャード・ジュエル』に関しては、サスペンスとしても「フーダニット(誰がやったのか)」がちゃんとそこに存在しており、物語が淡々と進む中でも観客が欲する「真相への欲望」と、登場人物が持つ個々の「問題への興味」がしっかりあるので最後まで飽きずにみられる。
また飽きない要素の一つにキャスティングの素晴らしさがある。
主演を務めたリチャード・ジュエル役のポール・ウォーター・ハウザーは俳優としての経歴はまだ10年足らずではあるが『アイ・トーニャ 史上最大のスキャンダル』や『ブラック・クランズマン』などで強烈なインパクトと絶対的な「嫌な奴感」で観客の記憶に残ってきた。そして今回のジュエル役はまさに彼の持つ個性に完璧なまでに合致しており、かつ実在していた(本物のリチャードさんは2007年に死去されている)人にそっくりでもはやポール以外のキャスティングではありえなかったといわれても仕方ないくらいである。そのほか、ジュエルの数少ない理解者で弁護士ワトソン役には『スリー・ビルボード』で2018年アカデミー賞助演男優賞を手にしたサム・ロックウェルが演じ、ジュエルの母親役には『ミッド・ナイト・イン・パリ』『ビリーブ 未来への大逆転』のキャシー・ベイツが演じている。
このキャシー・ベイツとサム・ロックウェルの二人の素晴らしい援護射撃によってさらに主人公ジュエルの置かれた状況と人柄に深みが出ていた。特に終盤での母親の涙の訴えは本作のハイライトともいえる。
またジュエルを追い詰める新聞記者にはオリヴィア・ワイルド、悪徳FBIにジョン・ハムとこれまた腕のある役者が当てはめれており、本作の水準を上げることに貢献している。(オリヴィア・ワイルドの演じた記者役の演出と設定は倫理的な問題が発生してたらしくて、それについては個々で調べてもらうといい)
ジョジョ・ラビット
タイカ・ワイティティ監督がヒトラーに!映画『ジョジョ・ラビット』日本版予告編
東宝シネマズファボーレとやまにて鑑賞
演出★★★★★
脚本★★★★★
映像★★★★☆
音楽★★★★☆
配役★★★★★
カタルシス度 95%
合計 111点
【総評】
ナチスに憧れる10歳の少年の成長を描いた作品。この概要だけで批判する人間が多いが実際作品を観ればタイカ・ワイティティ監督が何を訴え何を表現したかったかがわかる。実際問題として、ナチスは自国の子供たちを(子供であることに付け込んで)洗脳を行っていたわけだ。その最もたるがユダヤ人差別。本作はナチスを称賛しユダヤ人差別を助長させてるわけではない。いかにそれらが間違いで、主人公ジョジョはその間違いに気づいて成長していけるかを描いている。それは映画を観れば一目瞭然なのだ。
作中でジョジョの”心の中に存在するヒトラー”を演じていたのも監督であるタイカ・ワイティティだが、彼自身ユダヤにルーツを持っている。そんな彼の書いた脚本には「人を愛することと受け入れること」の大切さが詰まっており、この映画の光輝く部分はまさに監督自身の愛の結晶だろう。
10歳の少年に頭ごなしに「ナチスは間違ってる!」といっても聞くわけがない。戦時中ならなおさらだ。では如何にしてジョジョは成長するのか。そのカギがスカーレット・ヨハンソン演じる母親ロージーだ。夫が戦争に駆り出され、一人ジョジョを見守る。ナチスに陶酔する我が子を観て「間違ってる」とは思いながらも国内情勢とジョジョの意思の硬さに頭ごなしには言えない。ジョジョはそのロージーがこっそり匿っていたユダヤ人少女エルサとの出会いで運命が動き出す。母の愛と(ジョジョにとって)憎むべきユダヤ人のエルサを10歳の少年がどう受け止めるか、それが本作の見どころだ。
またジョジョの成長に欠かせないもう一人の人物がいる。クレンツェンドルフ大尉だ。演じるのは先ほど『リチャード・ジュエル』でも紹介したサム・ロックウェルだ。軍人である彼もまた国の動向とは別に人としての愛がある人だ。だからジョジョのことを厳しくも暖かく見守る。
子供はいつだって大人のいうことを聞いて育つ。それが正しかろうが間違ってようが、子供はそれを世界の絶対だと信じてしまう。ジョジョの純粋すぎる心に、母ロージーやクレンツェンドルフ大尉の愛に、ユダヤ人少女エルサの持つ魅力に観る者の心が暖かくなる一本となっているだろう。
終